洗面所の詰まりの原因は油ではないという誤解
キッチンのシンクが詰まった時、油汚れを溶かすために熱めのお湯を使うという話を聞いたことがある人は多いでしょう。このイメージから、洗面所の詰まりにも熱湯が効くはずだ、と考える人がいますが、これは大きな誤解です。なぜなら、キッチンと洗面所では、詰まりを引き起こす「汚れの主成分」が全く異なるからです。キッチンの排水管を詰まらせる主な原因は、調理に使った油や、食器に残った食品カスです。これらの油分は冷えると白く固まる性質があるため、配管内に蓄積しやすいのです。こうした油汚れに対しては、適度な温度のお湯はある程度、汚れを緩ませる効果が期待できます。一方で、洗面所の詰まりの主犯は、全く別のものです。それは、「髪の毛」と、それが「石鹸カス」や「皮脂」と絡み合ってできた、ヘドロ状の塊です。髪の毛の主成分はケラチンというタンパク質であり、これは熱湯をかけた程度では溶けません。美容院で髪を洗う時にお湯を使うのを考えてみれば明らかです。また、石鹸カスは、水道水に含まれるミネラル分と石鹸の成分が化学反応を起こしてできた金属石鹸と呼ばれるもので、これもまた水に溶けにくく、熱にも強い性質を持っています。つまり、洗面所の詰まりの原因物質は、熱湯では分解できないものばかりなのです。熱湯を流す行為は、効果が期待できないばかりか、前述の通り排水管を破損させるという高いリスクを伴います。詰まりを解消するには、その原因に合った正しいアプローチが必要です。洗面所の詰まりには、髪の毛を溶かす成分が含まれた専用のパイプクリーナーを使ったり、ラバーカップで物理的に詰まりを動かしたりする方法が有効です。原因を正しく理解し、適切な対処法を選ぶことが、トラブル解決への最短距離となります。