海外の映画に出てくるようなオープンでスタイリッシュなキッチンに憧れて、輸入キッチンや造作キッチンを検討される方は多いでしょう。しかし、ここで最も注意しなければならないのが、排水トラップの種類と日本の排水基準との整合性です。ヨーロッパや北米のキッチンでは、壁の中に配管を逃がす壁排水が一般的であり、それに合わせてボトルトラップやPトラップといった、非常にコンパクトでデザイン性に優れた種類が多用されます。これらは足元が完全にオープンなキッチンを実現するには最適ですが、床下に配管を通すことが一般的な日本の住宅構造にそのまま持ち込むと、様々な不具合が生じることがあります。まず、海外製のトラップは日本のものに比べて封水の量が少なく設定されていることが多く、日本の高温多湿な夏場には水がすぐに蒸発してしまい、悪臭が発生しやすくなるという問題があります。また、日本の排水管の直径と海外製トラップの接続サイズが合わないことも多く、無理に接続しようとして継ぎ目から水漏れを起こすケースも後を絶ちません。さらに重要なのは、メンテナンスの種類です。日本の椀トラップは、上から手を突っ込んで簡単に掃除ができるように設計されていますが、海外のデザイン系トラップの多くは、シンク下の手の届きにくい場所にあるキャップを外して掃除をしなければなりません。調理で油を多く使う日本の食文化では、トラップ内に汚れが溜まりやすく、掃除のしにくさが致命的な欠点になることもあります。もし、どうしても海外のデザインを採用したい場合は、見た目は海外製でも、内部のトラップ機構は日本の環境に合わせた「日本仕様」のハイブリッド型を選ぶのが賢明です。最近では、国内メーカーからも、デザイン性と日本の厳しい衛生基準を両立させた管トラップ風の製品が発売されています。排水トラップの種類は、その国の住文化や気候、食習慣と密接に結びついています。単に見た目の良さだけで選ぶのではなく、日本の厳しい環境下でしっかりと機能し続け、かつメンテナンスが自分自身で無理なく行える種類であるかどうかを、設計段階で入念にチェックすることが、美しいキッチンを長く使い続けるための絶対条件となります。