築十五年の賃貸マンションに住み始めてから、最近どうしても気になっていたのが浴槽の排水スピードでした。以前は栓を抜けばものの数分で空になっていた浴槽が、最近では十五分以上経ってもまだ底に水が残っているような状態で、冬場などは冷めた残り湯を眺めながら溜息をつく毎日でした。最初はドラッグストアで購入した強力な液体パイプクリーナーを何度も試してみましたが、一時的に良くなるものの、数日後にはまた元通りの重苦しい流れに戻ってしまいます。これは表面的な掃除では解決しない根深い問題だと悟り、私は意を決して排水溝の奥深くまで徹底的に清掃することにしました。まず、洗い場の排水口にあるヘアキャッチャーだけでなく、その下にある封水筒と呼ばれる筒状の部品を取り外しました。驚いたことに、その筒の裏側には、これまでの十年分を凝縮したかのような黒カビとヘドロが層を成して付着していました。これらが排水の隙間を狭めていたのは明白でした。使い古した歯ブラシや割り箸を駆使して、手の届く範囲のヌメリを徹底的にこそぎ落とし、シャワーの勢いを最大にして奥へと流し込みました。さらに、浴槽側の排水口にも着目しました。浴槽の栓が繋がっている穴の中を覗き込むと、そこにも髪の毛が数本、複雑に絡み合って水の流れを妨げていました。ピンセットを使ってそれらを引き抜くたびに、まるで血管の詰まりが解消されていくかのような奇妙な快感を覚えました。仕上げに、重曹とクエン酸を混ぜて発泡させ、その泡の力で配管の奥に潜む油分を浮かせ、最後は五十度程度のぬるま湯で一気に洗い流しました。すべての部品を元に戻し、期待を込めて浴槽に溜めた水を一気に抜いてみると、それまでの鈍い流れが嘘のように、気持ちの良い音を立てて水が吸い込まれていきました。業者に依頼すれば数万円はかかったであろうトラブルを、自らの手と数百円の掃除道具で解決できたことは、大きな自信に繋がりました。それ以来、私は週に一度、必ず排水口の内部までチェックすることを欠かしません。快適なバスタイムは、目に見えない場所への少しの関心と努力によって維持されるものなのだと、身をもって痛感した出来事でした。