築20年を迎えた大規模マンションの1室で、キッチン排水トラップの流れが極端に悪いという相談がありました。住人は5年前に入居した際、キッチン周りをリフォームしており、見た目は非常に清潔に保たれていました。しかし、シンクに水を流すとすぐに水位が上がり、完全に排水されるまで10分以上かかるという状態でした。まず現場で行ったのは、排水トラップの分解調査です。トラップ内部は住人のこまめな清掃によりピカピカでしたが、驚いたのはその下の排水ホースを外した際です。床から立ち上がっている塩ビ管の入り口付近に、白い石のような硬い物質がぎっしりと詰まっていました。これは長年の蓄積によって石灰化した油汚れで、ワイヤーを通そうとしても跳ね返されるほどの硬度を持っていました。この事例が興味深いのは、住人が「良かれと思って行っていた習慣」が原因のひとつだった点です。この方は、非常に几帳面で、毎日大量の洗剤を使用してシンクを磨き、その後に冷水を大量に流していました。しかし、この「冷水」が仇となりました。調理で流れた微量な油分が、冷水によって瞬時に冷やされ、配管の同じ場所に少しずつ堆積してしまったのです。解決策として、我々は特殊な超高圧洗浄機を導入しました。配管の深部までノズルを挿入し、旋回する水流で石灰化した汚れを粉砕・剥離させていきました。数時間に及ぶ作業の結果、配管内からは拳大の油の塊がいくつも出てきました。作業完了後、排水テストを行うと、水は吸い込まれるような勢いで流れていきました。この事例から学べる教訓は、目に見える排水トラップの清掃だけでは不十分な場合があるということです。特に集合住宅では、自室の管理だけでなく、配管全体の健康状態を考える必要があります。対策として、定期的な高圧洗浄を管理組合全体で実施することに加え、個々の世帯では「油を冷やし固めない」ための工夫、つまり、調理後の適度な温度の排水が推奨されました。流れの悪さは、単なる詰まりのサインではなく、日々の家事のやり方を見直すきっかけでもあります。
キッチン排水トラップの流れが悪い問題を解決した集合住宅の事例