日本のマンションストックが老朽化していく中で、大きな社会問題となっているのが「見えない配管」の劣化による水漏れ事故です。築三十年を超えるマンションでは、排水管や給水管に当時一般的に使用されていた鋼管や鋳鉄管が、内部から腐食し、ピンホールと呼ばれる微細な穴が開くことで漏水が発生しやすくなっています。特に問題なのは、居住者の管理責任範囲である「専有部分」の配管です。共有部分の立て管は管理組合が計画的に修繕を行いますが、床下に隠された専有部分の配管は、リフォーム時などに自主的に更新しない限り、新築時のまま放置されているケースがほとんどです。これにより、ある日突然、階下の天井にシミができるといった深刻な被害を及ぼすことになります。配管の劣化は、水の流れが以前より悪くなった、水の色がわずかに濁っている、あるいは排水口から下水の臭いが漂ってくるといった予兆として現れることもありますが、多くの場合、目に見えるトラブルが起きてから初めて気づくことになります。最近では、配管をすべて取り替える大規模な更新工事の他に、既存の配管の内部に樹脂をコーティングする更生工事などの技術も進化していますが、最も確実な対策は、やはり配管の寿命を見据えた全体的な更新です。リノベーションを検討する際には、内装のデザインだけでなく、床下の配管をすべて最新の架橋ポリエチレン管に取り替えるといった目に見えない部分への投資を最優先すべきでしょう。また、最新の漏水検知システムを導入することも有効な手段の一つです。微細な流量を感知して、異常があればスマートフォンに通知を送るデバイスも普及し始めており、こうしたテクノロジーを活用することで、留守中の大事故を未然に防ぐことが可能になります。マンションという資産を次世代に繋いでいくためには、表面的な美しさだけでなく、血管とも言える配管システムの健全性をいかに保つかという視点が不可欠です。築古マンションの購入を検討している方は、過去に配管の更新が行われているか、あるいは将来的な修繕計画に専有部が含まれているかを念入りに確認することが、予期せぬ水漏れトラブルから自分と隣人を守るための賢明な判断となります。
築古マンションで急増する配管老朽化と水漏れ対策