築三十年を超えた中古マンションに住み始めて数年、お風呂の蛇口からの水漏れがいよいよ無視できないレベルになりました。ポタポタという音が夜中に響き、蛇口本体も水垢と錆で見る影もありません。業者に見積もりを依頼すると、部品代に加えて技術料や出張料でかなりの金額が提示されました。それならば自分でやってみようと決意したのが、長く苦しい戦いの始まりでした。まずホームセンターで最新の混合栓を購入し、ネットの解説記事をスマートフォンで片手に作業を開始しました。最初の関門は、古い蛇口の取り外しです。長年の歳月により、配管と蛇口が一体化したかのように固着していました。モンキーレンチに全体重をかけても動きません。無理をして配管を折れば階下への漏水事故に直結するという恐怖が頭をよぎりました。一時間ほど格闘した後、一度作業を中断して浸透潤滑剤を吹き付け、半日置くことにしました。これが正解でした。夕方に再度挑戦すると、鈍い音と共に少しずつネジが回り始めました。しかし、本当の悲劇はここからでした。古い蛇口を外した後の壁側の配管穴を覗くと、中には錆びた鉄粉と古いシールテープの残骸がびっしりと詰まっていました。これを綺麗に掃除しなければ新しい蛇口を取り付けても隙間から水が漏れます。私は歯ブラシとピンセットを使い、暗い穴の中を三十分以上かけて磨き上げました。そしていよいよ新しい蛇口の取り付けです。シールテープを巻く回数や方向に細心の注意を払い、慎重にねじ込んでいきました。ところが、左右の脚の水平がどうしても合いません。右を締めれば左が浮き、左を合わせれば右が傾く。何度も外しては付け直す作業を繰り返し、ようやく水平器が真ん中を指したときには、外はすっかり暗くなっていました。水道の元栓を開ける瞬間の心臓の鼓動は、今でも鮮明に覚えています。蛇口の接続部から水が漏れていないか、数分間食い入るように見つめました。一滴も漏れてこないことを確認し、シャワーから温かいお湯が出た瞬間、思わず浴室でガッツポーズをしました。この経験で学んだのは、道具の重要性と、何よりも忍耐が必要だということです。古い設備には必ず予期せぬトラブルが潜んでいます。それを一つずつ冷静に解決していく過程こそがDIYの醍醐味であり、その苦労があるからこそ、新しくなった蛇口への愛着はひとしおです。
築古物件のお風呂の蛇口交換に挑んだ私の失敗と成功の記録